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「……学校、共学だったよな」
「えぇ、そうだけれど」
「お前、モテるだろ」
ポロリと出た言葉に、神保原は眉間に皺を寄せてそっぽを向く。
俺を置いて街の中を歩き出した彼女の後ろを、高校の時と変わらない距離で追いかける。
「随分とチャラチャラしたことを言うようになったのね。何だか見損なったわ」
「違う、そんなんじゃねぇ。高校の時とのギャップが大き過ぎたんだよ」
とにかく、地味で目立たなかったあの頃の神保原ウミ子には見えなかった。
きっと誰が見てもそう言うと思うし、すれ違うだけじゃ気付かない。
「嫌なのよ、軽い人達。飲み会に参加しては、そのままホテル。その後付き合ってくれないとか、遊ばれたとか、ホント馬鹿みたい」
「おぉ」
「何よその反応。溝田君はそう思わない?」
「うん、御もっともです」
根本的中身に変化は感じられない。
神保原は今日もピンと背筋を伸ばし、誰に恐れることもなく我が道を行く。
「簡単に付き合うなんて、有り得ない。コウタロウ君以上に好きになった人じゃないと無理」
妥協はできない、という神保原の言葉と、久しぶりに耳にした名前に、俺は薄く唇を開いた。
「……コウタロウ」
「もうずっと会っていないけれど、彼のことは本当に好きだったわ」
「うん、知ってる」
彼女との間を引き裂いてまで手に入れたかった、神保原の初めての彼氏。
「あ、キモト君は元気してる?」
「最近彼女ができたみたいで、すっげーデレデレしてるよ。その子、高校の頃の神保原にそっくりなんだ」
すると、キモト君には告白をされたけれど振ってしまったからね、と軽い口調で語った神保原に、俺は反射的に大声を上げてしまった。
「マジかよっ!」
――あいつ、告白してたのかっ……!
「あら、溝田君知らなかったのね」
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