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「気にしなくていいよ、もう吹っ切れてるし。だから、返事しなくて悪かったな、とか、変に後悔するなよ」
『……島津君』
「佐藤のことは俺より溝田の方が分かってると思うし、俺も二人のことはお似合いだと思ってる。邪魔して悪かったな」
だからもう、めそめそすんなって、こっちは笑っているのに、彼女は苦笑さえもしない。
きっと楽しい場所に来てるだろうに、本当に勿体ない。
「……じゃー、はいっ、もう終わり。そろそろ切るよ」
最後の最後まで、佐藤は笑ってくれなかった。
『ごめん』
「ううん。なら、お互い夏休み満喫して、二学期から頑張ろうな。じゃ、また」
謝り続けられるのが目に見えていて、俺は半ば一方的に着信を切ると、いつも通り笑って頷いてみる。
うん、大丈夫。
失恋って、こんなもんだ。
「なぁに佑馬、会話からして彼氏のいる子のこと好きだったの?」
「悪い?どうせ振られたけどね、ここは潔く新たなスタートを切ろうと思うよ」
「佑馬君なら、すぐに良い人見つかるはずだよ」
ハハ、ありがとうございます。
なんて言いながら、俺はギュッと携帯電話を握りしめたまま、以後後ろを振り返ることはなかった。
いつか全てが過去になる。
俺は、大事な人を笑顔にできるような人間になりたい。
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