俺は世界に切り取られた女の子に恋をした

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* 「ようやくやるべきことを終えたのね」 クリスマス当日、俺は予定のないと言った神保原を誘い、夕食を共にしていた。 個人経営のレストランに来ているのに、今日は特別な日だからと出される洒落たコース料理。 彼女はナイフやフォークを使って器用にチキンを食し、赤ワインを味わっている。 一方、残念なことにアルコールが苦手な俺は、一口だけ飲んで後はずっとグレープジュース。 「可純ちゃん、島津の所に送り届けてきた。だから俺はもう、『HEART』はしない」 「出会った頃に比べたら、随分成長したわね」 「自分で言うのもなんだけど、そう思うだろー?高校の頃のクズさに比べたら、大分マシになったわ」 去り際、俺は愛本にも全てを告白をし、これからも自分ではない自分と上手くやっていってくれとお願いをした。 音声のみの不思議な存在だった、愛本。 だがしかし、最後に話をした愛本の声は人間味を帯びていて、再び涙腺が緩んだ。 『全く、溝田様は泣き虫ですね』 元々人前で泣くことなんてなかったのに、俺は『HEART』に出会って何度涙を流しただろう。 「神保原の方はずっと放置状態?」 「スキップはしていないから、コウタロウ君達はまだ高校生のままね」 それでいいのか。 彼らの時間を止めたまま、自分だけ前へ進むのか。 偉そうなことを言える立場じゃないのは分かっているが、俺は食べるのをやめて彼女を見つめる。 しかし、神保原はハッキリと言い切ったのだ。 「私、以前あなたに提案とお願いがあるって言ったじゃない」 「あぁ、そういえば言ってたな」 「彼達が生きる未来を一気にスキップして、一緒に『HEART』を守りましょう。私、溝田君が現実に戻って来るのをずっと待っていたのよ」 ――俺を待っていたって?
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