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島津にコウタロウ、ユメちゃんに桜子ちゃん――そして、可純ちゃん。
彼らは神保原の父親と共にこちらのテーブルにやって来くると、興味深げに俺達を見下ろした。
「あなたが溝田君?うわぁ……何だか不思議な気持ち」
「ウミ子ちゃんって君?めっちゃ可愛いじゃん。神保原から二人の話は聞いてるよ」
可純ちゃんは俺に、コウタロウは神保原ににこやかに話しかけてくる。
――中年だ……。
「あの、おじさん。これは一体……」
俺も神保原も面影を残した彼らが誰なのかは一瞬にして分かっていたが、中々状況が掴めない。
「いきなりビックリしただろう。驚かせてすまなかったね」
彼は彼で現実を生きようと歩き出し、連絡を絶っていた友人達に再び近付いたらしい。
「そしたら、島津の家の子供さんが、溝田君と同じくネット抽選で『HEART』を当てたらしくてね。僕から関わりを絶っていたからそっとしていたものの、色々とバレてたんだよ」
「あんなの作れるなんて、さすが神保原だよなー。だって、高校の時俺そのものだもん」
そう言ってニカッと笑うのは島津佑馬。
皺は増えたが、満点の笑顔は高校の頃とちっとも変らない。
「溝田君だっけ。可純とのこと、聞いたよ。高校での俺、ガツガツしててウザかっただろ」
「や、それはこっちの台詞です。二人のこと、随分困らせましたし」
二人の子供の両親となった彼らは、この歳になっても変わらずお互いを想い合っているように見えて仕方がない。
お似合いの夫婦だった。
「可純ちゃんって呼ぶのは変ですよね」
「ううん、大丈夫だよ」
「幸せそうでよかったです。何か……ホントに、俺、嬉しいです」
神保原の父親がサンタとなって連れて来た懐かしい友人達は、皆それぞれの人生を生きている立派な大人だった。
『HEART』にいる可純ちゃんも、きっとこんな風に生きていくんだ。
大丈夫。
不安に思うことは、もう何もない。
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