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恋愛シュミレーションゲーム『HEART』の存在を知ったのは、インターネットの掲示板。
普段からよくゲームをする俺は、一般人が知るよりは先にこの謎のゲームの存在をチェックしていた。
バタバタと世間が騒ぎ始めたのは、それから半年程経った頃だった。
「なぁなぁ、圭吾!『HEART』ってゲーム知ってる?」
「……今更?」
『HEART』がゲーム雑誌の一面を飾った時、クラスの友達、キモトが得意げな顔をして聞いてきた。
「ネットじゃ結構前から注目浴びてたけど?キモト知んなかった?」
俺はゲーム好きのくせに、情報に疎いキモトを恥ずかしく思う。
「えー、マジで?」
「マジだよ。知んないとかだっせーなぁ」
十二月の、とても冷たい風の吹く日の昼休み。俺とキモトは今日も教室の隅に二人で身を寄せて、コソコソお喋りを楽しむ。
クラスメイト達は影の薄い俺らの存在なんて全く見えていなくて、男子の中心人物達はプリントを丸めてボールを作り、教室の真ん中で野球を楽しんでいる。
「圭吾、買う気ねーの?」
「あれ信じられないくらい、くっそ高いだろ、んなの買うなら他のソフト何千本も買うし!」
「やっぱバイトとかしねーと手ぇ出せないよなぁ。ま、バイト所じゃ無理だけど」
キモトは脂肪が乗ったまん丸の頬をポリポリかく。
部活もバイトもしていない。頭も良くなければ、運動神経も目立たない。
容姿に至っても褒めれる箇所なく、俺らは所謂クラスに一人か二人は絶対にいる、目立たなくて、いてもいなくてもどっちでもいい奴。
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