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ふとした拍子に、プリントで作られた紙製のボールが飛んできた。それがキモトの頭にぶつかり、俺とキモトは彼らの方に向き直る。
「あ、わりぃ、ボール取って」
足元に落ちていたそれを広い、投げ返すと、中心人物達は愛想良く笑ってくれた。身分の低い自分達にも、まぁ一応優しくしてくれているって感じ。
心の中で馬鹿にされているのは分かっているが、よくしてもらえるのならばそんなの構わない。
"リア充"俺は彼らをまとめてそう呼んでいる。
「……いいよなぁ、リア充達は何してる時も様になってる」
「一歩学校の外に出たらただのガキンチョなのに、校内じゃ怖いもの知らずだよな」
「まー、そうだろな」
「マジ、偉そう」
ムカつく、とキモトは皮肉っぽく呟く。
──お前、苛められないだけありがたく思えよ。
存在感あり過ぎる巨漢を横目に、俺は白々しくそっぽを向いた。
俺は別にリア充達が嫌いなわけではない。偉そうだとは思うが、一方で、自分に自信を持って堂々としていられる姿に、羨ましさを感じていたからである。何も出来ないくせに、見えない所で文句を言っているキモトの方が、よっぽど醜く感じた。
「キモトって、昔から人の悪口だけは一人前だよな」
「別に思ったこと言ってるだけだしー」
「ちょっとは控えようって思わないわけ?」
キモトとは小学時代からの付き合いで、かれこれ今年で十年目になる。今でもたまに喧嘩はするが、素の自分を見せることができる数少ない友人だ。
「キモト、『HEART』のために頑張る気ねーの?」
「無理無理、どんなことしても、んな金稼げねーわ」
キモトは制服の上から腹についた肉をつまむ。
「そう最初から決めつけんなよ」
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