476人が本棚に入れています
本棚に追加
*
自転車をかっ飛ばして家に到着すると、靴は脱ぎ散らかし、そのまま階段を上り二階の自室へ向かう。
「ちょっと圭吾ー、帰ったの?」
背後から母親の声がしたが、振り返ることはない。帰ったよ、と聞こえる程度の返事をするとバタンッと扉を閉める。
俺の部屋。俺の匂い。俺だけの空間。
「ただいま」
胸いっぱいに空気を吸い込むと、ベットに飛び込んだ。見上げた天井には、大好きなアニメのポスターが貼ってある。あぁ、なんて居心地が良いんだろう。
そのまま一時間くらい昼寝をした後、俺は勉強机の上に設置してるパソコンに向かい合った。型はそんなに新しくないが、とても重宝していた。
──何か面白いネタ転がってねーかな。
最近切ったばかりの髪の毛をバサバサかきながら、インターネットを開く。
明日のことなんて何も考えていない。考えても、空しいだけだ。こういう時間が俺は好き。
「え、『HEART』が抽選で当たる……?」
ふと、思わぬ素晴らしいページに出会ってしまい、俺は画面すれすれまで顔を付ける。一等が一名で『HEART』、二等や三等も中々な商品だったが、そこに意識は向かない。
──つっても、こんなの当たるわけない……か。
でもとりあえず応募だけでもしてみよう、と駄目元で情報を書き込み送信する。
これで当たりでもしたら、なんて甘い考えは浮かばない。図書券でも当たれば幸いだ。
最初のコメントを投稿しよう!