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「何か今日可純、甘ったるい匂いがする」
翌日、学校へ来て一番。
トモミが私の周りをクンクン犬みたいに嗅ぎ回る。
バレるわけにはいかない。
「朝、ホットケーキ食べたからかも」
後ろ手にあるケーキボックスの隠された袋を、誤魔化すようにそそくさと自分の席へ急ぐ。
そしたら、横を通っただけの溝田君も同様に
「ホントだ、佐藤さん何か甘い匂いするね」
――そんなに匂う……!?
「香水か何かつけてる?」
「何もしてないよ、ホットケーキホットケーキ」
今度は溝田君に袋を隠しながら、やっとこさで席に辿り着くことが出来た。
ケーキボックスの入った袋は、ロッカーの奥に丁寧に隠す。
正直、物凄くはりきってしまったかもしれない。
ケーキはデコレーションまで完璧。
本番は今夜なのに、トモミには申し訳ないことをしているのかも。
でもこんな機会、もう二度とないことだと思ったら、手を抜くことは出来なかった。
「おう、コウタロウおはよ」
今日も朝から笑顔の島津君は、いつもと変わらない。
昼休み、何とか理由をつけて屋上へ向かう体に緊張が走る。
――軽い口調で言われたのだから、軽いノリでいかないと。
そう思っていても島津君を前にすると、中々笑えない。
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