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「可純ぃ、あたしあんたのこと大好きだ!」
誕生日本番の昼休み、ケーキを前にしたトモミは人目を気にせず抱き付いてきた。
「ちょっ、ト、トモミ」
「こんなに愛のあるプレゼントは初めてだと思う」
「喜び過ぎ」
周りに注目を浴びるくらい、トモミは教室の真ん中でギャーギャー騒ぐ。
その様子に嬉しさを感じるものの、恥ずかしさの方が勝ち彼女を宥める。
「せっかくだから少し食べてもいい?」
「あ、ナイフとフォーク持って来てないよ」
家に持って帰るのだと思っていたばかりに、今日は準備していなかった。
「大丈夫、食べれるよ」
幸せそうに微笑むトモミは、机に置いたケーキに直接かぶりついた。
純白のケーキに、歯型のかじられた跡が残る。
「うっまー!」
「ちょっとヤダ、クリームいっぱいついてるじゃん」
ティッシュを取り出すと、拭いて、と顔を突き出された。
「……トモミったら」
「ヘヘッ、めっちゃ嬉しい。ホントありがと」
ここまで喜んでもらえるとは思っていなかった。
せっかくだから写真を撮ろう、と、トモミは携帯を取り出してカメラの準備をする。
パシャパシャとシャッターを切る音が教室には似つかわしくて、照れ臭かった。
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