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写真を撮ることに満足すると、トモミはケーキを抱えて席を立つ。
一体どこに行くのだろう。
黙って姿を追うと
「佑馬、誕生日だからって可純にプレゼント貰った!」
トモミはいつも以上にハイテンションで、島津君に自慢げにケーキを見せつける。
「いいでしょー、欲しいって言ってもあげないからね」
自分が言えることでもないけど、ガハハと笑う様子は、もはや女子ではない。
「やべ、すげー美味そうじゃん!」
トモミのかじった後があるのに、島津君と一緒にいた水内君は自分もとかじりつこうとする。
間一髪の所で歯形がつくことはなかったが、彼の唇にはべっとりクリームが付いてしまった。
「うわっ、水内やめてよ!汚れんじゃんっ」
「まっ、失礼な」
ケーキを挟み、トモミと水内君は睨み合う。
そしたら様子を見ていた島津君が、水内君の頭をポカン、と緩く叩いた。
「彼女いる奴がそういうことすんな」
水内君には彼女がいる。
彼とは対照的に大人しい感じの子で、クラスの中じゃ私もトモミの次に仲が良い。
ユメちゃんは優しくてとても良い子。
彼女になってほしい、と告白をした水内君は、女の私からして見る目があると思う。
「まず俺、トモミのこと女だと思ってないから」
「ハァ!?ふざけんな」
いがみ合う二人。
でもこれはたまに見る光景で、宥めながらもついつい笑ってしまった。
島津君も同じように笑っていて、目が合うともっと目を細められる。
『よかったね』
そう言われている気がして、私は何度も頷いた。
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