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とりあえず後でまたかけ直す、と一旦電話を切ると、隣にいた溝田君が笑っていた。
「ごめん、声が大きくて全部聞こえた」
「……うん、だろうと思った」
「島津と仲良くしてたから、桜子ちゃんに嫌味言われたって?」
聞き流してくれればいいのに、溝田君はサラリと聞いてくる。
桜子ちゃん絡みの話だからかもしれない。
「トモミさんって、島津のこと好きなの?」
「トモミはそんなんじゃないよ」
言い返しながら、不思議に感じる。
――溝田君、トモミさんって言うんだ。
桜子ちゃんのことはちゃん付け、トモミのことは下の名前、なのに自分は堅苦しく苗字にさんって。
構わないけど、そんなに堅苦しく思われているのか、と可笑しな気持ちになった。
「でも、トモミは島津君と中学が同じで、すごく仲が良いよ」
「クラスでも桜子ちゃんと同じくらい、よく話してるもんね」
二人の仲を妬くのは分かるけど、嫌味を言う程のことじゃないと思う。
それに、友達として仲良くしているのだと、傍から見ても分かると思うのに。
――桜子ちゃん、機嫌が悪かったのかな。
「あの子、ちゃんと見てると小悪魔っぽいもんね」
「……?」
「桜子ちゃん」
他人事のように考えていると、溝田君が私の方を見てボソッと呟いた。
みんなには秘密だよ、と人差し指を唇の前に立てて、微かに笑う。
「桜子ちゃんは小悪魔なんかじゃないよ」
仲が良いわけじゃないから、良く知らない。
でも簡単に、小悪魔なんて決め付けたくないから否定すると、佐藤さんは見えてないな、と小馬鹿にされてしまった。
そして翌日、トモミも溝田君同様、桜子ちゃんのことを小悪魔だと暴言を吐いていた。
確かに、話によれば結構酷いことを言われたみたい。
でもまぁ、トモミはそれをそのまま島津君に暴露するらしいけど。
――あぁ、何かみんな怖いよ。
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