世界の何処かで、何かがハジケタ

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-溝田圭吾 『HEART』の世界では三月に入り、少しだけ冷たさが和らいだ気がする。 でも現実世界は二月。 寒さのピークを迎えていた。 その日珍しく早起きをした俺は、久々にインターネットを開いてみた。 『HEART』に出会う前は、毎日数時間は情報収集をしていたのに、最近ではさっぱりだった。 他のゲームも全くしないし、最近はまともになったかもしれない。 『HEART』はゲームだけど、ゲームじゃない。 少なからず、今の時点では俺はゲームだとは思っていない。 あれは『HEART』という一つの世界なんだ。 「そうだな、他のプレイヤーの情報でも転がってないかなぁ」 考えてみれば、愛本に尋ねるだけで、世界について自分で調べたことはなかった。 高額な『HEART』の持ち主は数少なく、情報もあまり見つからない。 持ってないだろう奴の批判や、嘘っぽいネタばかり。 ――んだよ、使えねーな。 バシャバシャとキーボードを叩き、様々な角度から調べてみる。 そうこうしていると、一つのブログに辿り付いた。 読み進めていくと、どうやらここの管理人は『HEART』を所有しているらしい。 性別は分からないが、学生とだけ記されている。 「おーっ……すげ!」 ――管理人、あっちの世界に恋人がいるんだと。 信用出来るかはまだ判断できないが、書いてある情報を見る限りじゃ、実際にしてみないと分からないことばかりが書かれている。 愛本の名前を見つけた時は、とても不思議な気持ちになった。 俺にとっての愛本は一人でも、愛本は他のプレイヤーの近くにも存在しているんだ。
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