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「圭吾、おはよ」
現実で俺に声をかけてくれるのは、太っちょのキモトしかいない。
こんなに寒いのに今日も暑そうだ。
何か食べているわけではないのに、今日も頬をパンパンに膨らめていた。
「今日から体育マラソンだってな」
「え!?マジかよ!」
今日は月曜日、『HEART』の方でも三限目に体育が入っている。
――死ぬわ。
「何そんなに驚いてんのさ。まぁ、確かにマラソンは俺にとっても地獄だけど……」
「『HEART』の方でも、今の体育マラソンなんだ」
「うっわ、そりゃきついな」
「何とか最下位は免れてたけど、ガチでもう無理かも」
項垂れて頬を机につけると、隣の席のリア充女子と目が合った。
ニコリともせずに、視線を逸らされる。
何も言わないけど、絶対キモッって思われた。
休み時間、トイレの鏡で自分の顔をマジマジと見つめ、絶望した。
セットせずに出てきたボサボサの髪、似合っていない眼鏡。
オシャレ感ゼロ。
加えて低身長。
太っていないだけまだマシだが、普通の奴よりもずっと劣っている。
嫌いだ。
リアルの俺はキモオタで、何の取柄もなくて、いてもいなくても良い存在で。
……逃げ出したくなる。
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