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桜子ちゃんとトモミさんの仲が悪くなってから、数日。
「別に佑馬君のこと何とも思ってないなら、それでいいのよ……別に」
友達に愚痴を言う桜子ちゃん。
「何今更。ホント、桜子ちゃんのあの時の顔ったら怖かったー」
苦笑する佐藤さんに、怖い顔をして話をするトモミさん。
休み時間、俺はコウタロウの席で彼女達を見比べていた。
「女ってこえーな」
「だなー、男はここまでネチッこくないよな」
感慨深く告げるコウタロウを見て、自分も頷く。
――誤解が解けたんなら、それでいいじゃん。
なのに、未だ二人は口をきいていない。
トモミさんを見つめる佐藤さんは、揉め事は嫌だからと双方をフォローするが、その成果はない。
「ま、男女のことになると、女は熱いってことだよ」
既に彼女がいるコウタロウには、余裕が見え隠れ。
「……にしても、原因の佑馬は知らん顔ばっかってズリーよな」
コウタロウが指を差した先には、クラスメイトと話をする島津。
スポーツ雑誌なんか広げて、フォームについて熱く語っているその姿には呆れてしまう。
「島津、どうでもいいのかな?」
「そんなとこだと思うよ。あいつにとっちゃ桜子ちゃんもトモミも友達だし、どっちかの味方になったりとかはないと思う」
「島津って桜子ちゃんのこと好きじゃないの?」
「ないない、あいつは友達として仲良くしてるだけ」
コウタロウは笑って即答した。
「へぇ……」
あれだけ可愛い女の子なのに、島津は桜子ちゃんのことも、ただの友達としか思ってないのだろうか。
恋人に見えるくらい仲が良く、今すぐくっ付いても不思議に思わないからこそ驚いてしまう。
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