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「佐藤さん、大変そうだね」
放課後、教室を出ながら話しかけると、やっぱり彼女は苦笑いをする。
島津みたいにほっとけばいいのに、友達のことだからかそうはしない。
「だって喧嘩って、お互い気持ち良くないじゃん」
「良い子ぶってること言ってんね」
俺は佐藤さんを見て笑う。
「ね、これから暇?どっか行かない?」
「……今から?」
「うん、何かあるなら別にいいんだけど」
首を振り、何もない、と言った佐藤さんを連れて、俺は学校の外を目指す。
島津と桜子ちゃんがいるはずのプールを突っ切って、外の世界へ飛び出した。
佐藤さんは不思議そうに首を傾げたが、プライベートな時間をくれるようだ。
「溝田君、どこ行くの?」
「佐藤さんって何が好きなの?」
「……へ?」
「助けてもらったお礼、出来てなかったじゃん」
車に引かれそうになった所を助けてもらってから、俺はまだ彼女に何もしていなかった。
いつもなら睡眠時間の為に直帰する所だったが、今日は別。
「俺の気持ちだから、素直に甘えて」
断られると分かっていながら、俺は女の子が好きそうなジュエリーショップの中に足を進めた。
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