476人が本棚に入れています
本棚に追加
……そんな俺の元に、大きな謎の段ボールが送られてきたのは、三学期が始まる数日前。
「圭吾、何か注文してたの?」
「いや?してないけど」
荷物を受け取った母は、興味あり気に茶色い箱を見つめる。
「あんた、何か変な物でも頼んでたんじゃないでしょうね」
「んなことしねーよ!」
父親に手伝ってもらって、何とか自室にダンボール箱を運んでもらう。
「何だよこれ」
部屋に一人になると、俺は得体の知れない箱の前に胡坐をかいた。全く覚えがない。何かの嫌がらせだろうか、恐る恐る、貼られたテープを剥いでいく。
『溝田様、この度はご当選おめでとうございます』
すると、中身を確認してみようと蓋を開けると、一番上にA4サイズの紙が入っていた。
『よろしければ実際にやってみて、アンケートにご協力して頂けると幸いです。アンケートは当選者発表ページから……』
──当選者……え?
ガバッと起き上って段ボールの中身を取り出してみる。
「う、嘘だろ。これって……」
──『HEART』じゃん!?
ネットや雑誌でしか見たことのなかった不思議な機械、紛れもなく『HEART』がここにある。一体何事!?
もうすっかり忘れていたネット抽選が脳裏を過る。
「嘘、マジかよ」
インターネットで当選者ページを確認すると、一等の欄に自分の名前が表示されていた。
突然の出来事に、まだ嬉しさを感じれない。夢のような気分で、俺はそっと装着機械を触った。
──夢じゃないよね?
これが、俺と可純ちゃんとの出会い。
同じゲームは存在しても、俺の発した言葉に感情を示してくれる、世界で一人だけの、だけどゲーム世界にいる、佐藤可純ちゃんとの出会いだった。
彼女は心を持った人間だ。でも、現実世界には存在しない。だけど、ロボットでもない。
本気で好きになるんなら、最初からやんなきゃよかった。いつの日か、そんなことを思うとは知らずに、俺はもう一つの世界に足を踏み入れようとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!