プロローグ

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 ……そんな俺の元に、大きな謎の段ボールが送られてきたのは、三学期が始まる数日前。 「圭吾、何か注文してたの?」 「いや?してないけど」  荷物を受け取った母は、興味あり気に茶色い箱を見つめる。 「あんた、何か変な物でも頼んでたんじゃないでしょうね」 「んなことしねーよ!」  父親に手伝ってもらって、何とか自室にダンボール箱を運んでもらう。 「何だよこれ」  部屋に一人になると、俺は得体の知れない箱の前に胡坐をかいた。全く覚えがない。何かの嫌がらせだろうか、恐る恐る、貼られたテープを剥いでいく。  『溝田様、この度はご当選おめでとうございます』  すると、中身を確認してみようと蓋を開けると、一番上にA4サイズの紙が入っていた。 『よろしければ実際にやってみて、アンケートにご協力して頂けると幸いです。アンケートは当選者発表ページから……』  ──当選者……え?  ガバッと起き上って段ボールの中身を取り出してみる。 「う、嘘だろ。これって……」  ──『HEART』じゃん!?  ネットや雑誌でしか見たことのなかった不思議な機械、紛れもなく『HEART』がここにある。一体何事!?  もうすっかり忘れていたネット抽選が脳裏を過る。 「嘘、マジかよ」  インターネットで当選者ページを確認すると、一等の欄に自分の名前が表示されていた。  突然の出来事に、まだ嬉しさを感じれない。夢のような気分で、俺はそっと装着機械を触った。  ──夢じゃないよね?  これが、俺と可純(かすみ)ちゃんとの出会い。  同じゲームは存在しても、俺の発した言葉に感情を示してくれる、世界で一人だけの、だけどゲーム世界にいる、佐藤(さとう)可純ちゃんとの出会いだった。  彼女は心を持った人間だ。でも、現実世界には存在しない。だけど、ロボットでもない。  本気で好きになるんなら、最初からやんなきゃよかった。いつの日か、そんなことを思うとは知らずに、俺はもう一つの世界に足を踏み入れようとしていた。
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