476人が本棚に入れています
本棚に追加
-島津佑馬
「桜子ちゃん?好きじゃないよ」
ある日の昼休み、何気なく聞いてみると溝田はあっけらかんとした。
どうやら最近桜子の名前を聞かないと思ったら、そういうことだったのか。
まぁ、自分にとっては関係のないことだから、これ以上は突っ込まない。
「じゃあ、圭吾は他に気になっている子いないの?」
ムシャムシャお弁当を食べながら、コウタロウは溝田のことをジロジロ見る。
コウタロウは恋愛話が大好きだ。
「気になってる子はいるよ」
「えー、マジで!誰、誰?」
教室内をキョロキョロ見渡すコウタロウに、溝田はクスクス笑った。
サラサラの前髪も一緒に微かに揺れ、何でもない光景なのに絵になる。
「佐藤可純」
「へぇー!確かにお前らいっつも二人で帰ってるもんな」
「何でもない子だと思ってたけど……笑った顔がとんでもなく可愛いんだよね」
佐藤は一体どんな笑顔を見せたのだろう。
薄ら微笑んでいる姿しか思い浮かばない。
溝田はどうやって彼女を笑わせたのだろうか。
「……うん、いいんじゃない?」
俺は照れ笑いをする溝田に親指を立てた。
「佐藤って彼氏いなかったの?」
「前聞いたらいないって言ってた。本気で好きになった時は、コウタロウも島津も協力してくれる?」
「出来ることがあったらねー」
頼る前に自分で頑張れよ、と可笑しくなって笑ってしまう。
――気になる人や好きな人がいる時って、毎日がもっとキラキラしてるもんな。
佐藤の名前を口にする溝田は楽しそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!