476人が本棚に入れています
本棚に追加
*
本日も雲行きは怪しいが、だからと言って世界に影響することはない。
でも、この特別な空間を作っている得体の知れない何モノかは、自分のこともどこからか見ているのだろうか。
俺はちゃんと生きていて、俺の生を宿したのは両親なのに、結局全てを作っているものが分からないなんて、おかしいと思う。
ある日の朝のことだった。
どんよりした空の下、気合いを入れて歩を進めていると、何やら変な声が聞こえてきた。
――何だろ。
どこか聞き覚えのある声に興味持ち、声のする方へ突き当りを右に曲がると、サラサラの後ろ髪に目がいく。
溝田が制服を着て歩いている。
きっとこれから学校へ行く所なんだ。
隠れるわけでもなくただ後ろ立ってみるが、俺がいることには気が付いていないようで、溝田は一人ぶつぶつ何かを言っている。
「なぁ、この世界って、好き勝手に操ること出来ねーのかなぁ」
――は?
「俺が現実から母に揺すられた時、こっちにいる自分に痛みが伝わったんだ」
何言ってんだこいつ。
まるで誰かと話をしているように、溝田は饒舌に喋っていて、独り言を言っている風には見えない。
なのに、やっぱり周りには誰も見当たらない。
「例えばよ?例えばの話。俺がこの世界を終わらせたり出来るのかなー、とか」
ケラケラ笑いながら、物凄いことを言っている。
普通の人間じゃ口にしないような現実的ではない台詞に、俺は声をかけるタイミングを失った。
最初のコメントを投稿しよう!