あの子の世界に、秘密を見つけた

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『HEART』について語るブログの管理人とは、変わらず毎日メールのやり取りをしている。 クラスメイトの誰がどんな奴だとか、現実の生活リズムはどうしているだとか、どうでもいいっちゃどうでもいい内容だ。 でも、日数を重ねるうちに少し打ち解けてもらえたようで、管理人が女の子であることと、俺と同じ地方に住んでいることは分かった。 「愛本、俺、『HEART』を持ってる女の子と友達になったんだよね」 『凄いじゃないですか、おめでとうございます』 現実ではくそみそな有様だと言うことを、愛本には話している。 こいつには何も隠すことはない。 「ま、ネット友達なんだけどね」 『溝田様はゲームではなく、現実で恋人が欲しいとは思われないんですか?』 「思っても今まで出来なかったんだよ、嫌味か!」 ――ムカつくこと言うなぁ。 感情がこもっていないだけに、愛本の言葉はたまにめちゃくちゃイラッとする。 現実でちゃんと恋愛が出来るんなら、ゲームなんて最初から手を出さない。 「まぁ、今は佐藤さんなんだよ。佐藤さんのこと、GETしたい」 『GETって、まるで物のような言い方は宜しくないかと』 「分かってる分かってる、桜子ちゃんの時とは意味が違う」 じっくり攻めようと思っていると急かすようなこと言って、強く求めるようなことを言えば焦るなと危険信号を出してくる愛本。 まぁ、よく俺のことを理解していると感じている。 「でもな愛本、俺は今後お前の意見を聞かない時だって、あると思う」 『最後の決断は溝田様の意志を尊重しますので、私は何も言いません』 ――そこはやけに、しおらしいんだな。
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