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本日も『HEART』の中へ旅立つ為に、帰ってすぐ湯船に飛び込む。
乱雑に全身を洗い、ドライヤーで中途半端に髪を乾かすと自室の扉を開いた。
――あぁ、これから出発だ。
リアルでもこんな気持ちになれたら、どんなに良いことか。
俺は今、気分が良い。
……とその時、明らかな部屋の異変に気が付いて、その場でギャーッと叫び声を上げてしまった。
外の電信柱に止まっていたカラスも飛び立つような悲鳴の後に、リビングの扉が音を立てて開かれる。
「圭吾!?どうしたの!?」
只事ではない大声にドタバタ階段を上ってきた母親は、バシバシ俺の肩を叩いた。
「ねぇ圭……」
「ふざけたことしてくれたな!おい!」
「え?」
「何で勝手に部屋片付けてんだよ!それに……」
俺はゲームの電源を入れっぱなしで学校へ行っていたのか。
ゲーム本体のランプが緑色に光っているのに、ゴチャゴチャしていたコードは全て抜き取られ、段ボール箱の中に綺麗に詰めてある。
本体の場所も動いているし、もし変な触り方でもされていたら……。
「あら圭吾、あんたパソコンの電源も入れっぱなしじゃない」
「ふざけんな!勝手に触んないでっていつも言ってるだろ」
「せっかく掃除してあげたのに、親に向かってその口のきき方はどういうこと」
「うるさい!出てけ!ふざけんな……!」
電源を入れっぱなしにしていたのは俺で、電源を切ってさえいればここまで不安になることはなかった。
元々の原因が自分にあるのは理解出来る。
それでも勝手に触られたことが許せなくて、俺は母親を部屋から追い出すと、すぐさまコードを繋いで『HEART』に飛び立った。
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