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『溝田様、数分間、視界がジラジラと見えにくい状況が続きました』
ベットの上で起きてすぐ、愛本は挨拶をする前に本題に入った。
「うん、母親に電源入れっぱなしでコード抜かれてた」
『やはりそうでしたか、そちらで何かあったのだとは思っていました』
急いで制服に着替えて、俺は玄関をダッシュで飛び出す。
しかし、あと一歩の所で腕を掴まれ振り返ると、お上品な母親が困った顔をして立っていた。
「圭吾、あんなことがあったのに、あなた学校へ行くの?」
「あんなことって」
「昨夜のことよ。目の前が真っ暗で見えなくなったじゃない……あんなこと初めてだった」
心配そうに行く手を阻もうとする母の腕をやんわり振り払い、俺は親指を立てる。
「大丈夫、問題ないから」
「そんなこと言ったって……」
「じゃ、行ってきます!」
扉の開けられていたリビングの中からは、昨夜の出来事をニュースとして取り上げている声が聞こえてきた。
――ヤッベ……!
俺です、俺が原因なんです。
……とは言えず、とりあえず走って学校へ行くと、教室はざわついていた。
桜子ちゃんは人目を気にせずに島津にピッタリくっ付いていて、顔を青くしている。
そして奥の方では、佐藤さんが複雑な表情でトモミさんと話をしていた。
「佐藤さん、昨日大丈夫だった?」
「おはよう。……ビックリしたね、何だったんだろう」
唇に指をくっ付けて、彼女は今朝の母と同じような表情をしている。
「怖かった」
「だよね、ごめん」
「は、どうして溝田が謝ってんの?」
謝るとすかさず横から口を挟んできたトモミさんは、俺を遠慮なく睨みつける。
佐藤さんとは仲が良いが、気が立っている時はものすっごく怖いこの人が、俺は最近苦手になりつつある。
「……や、なんでもないっす」
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