あの子の世界に、秘密を見つけた

7/33
前へ
/253ページ
次へ
やがてチャイムが鳴り担任が教室に現れると、朝のHRが始まる。 しかし今日はいつもと状況が違い、普段優しそうな担任が表情を曇らせたまま話を始めた。 「とりあえず皆、無事みたいでよかったです。知っての通り、昨夜あることが起きましたね」 ふざける者は誰一人おらず、身を乗り出す他の生徒に比べたら、俺が一番呑気に耳を傾けていた。 原因が分かっているから、何の興奮もない。 とりあえず無事に『HEART』の中に来れたことにホッとした。 「あの現象は一体何だったのか、やがて政府や研究所から発表があると思います」 今は情報を待つしかない、というような言い方だった。 現実だと思っている世界が、突如壊れたテレビのようにガザガザ消えかけようとしたら、そりゃあ世界中がパニックになるのは当たり前。 「今朝の職員会議で決まりましたが、今日はこのHR終了後、自宅待機をしてもうことになりました」 ――えっ、マジかよ!せっかく来たのに。 「一応明日からは通常授業の予定ですが、もし変更があった場合は連絡網を回します」 二十分程のHRが終了すると、あっけなく解散となった。 こんな摩訶不思議な現象はもう起こさせない。 だから、学校休みにしなくても大丈夫なのにな……。 さっさと身支度整えて一刻も早く、と教室を出ていく生徒に比べ、俺はのんびり佐藤さんを迎えに足を向ける。 だが、彼女の前には既に背の高い男が立っていた。 「一緒に帰ってもいい?」 あいつのことを必要としている桜子ちゃんにではなく、佐藤さんに一緒に帰ろうと言った島津は、彼女のことを真上からじっと見下ろしていた。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

476人が本棚に入れています
本棚に追加