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やがてチャイムが鳴り担任が教室に現れると、朝のHRが始まる。
しかし今日はいつもと状況が違い、普段優しそうな担任が表情を曇らせたまま話を始めた。
「とりあえず皆、無事みたいでよかったです。知っての通り、昨夜あることが起きましたね」
ふざける者は誰一人おらず、身を乗り出す他の生徒に比べたら、俺が一番呑気に耳を傾けていた。
原因が分かっているから、何の興奮もない。
とりあえず無事に『HEART』の中に来れたことにホッとした。
「あの現象は一体何だったのか、やがて政府や研究所から発表があると思います」
今は情報を待つしかない、というような言い方だった。
現実だと思っている世界が、突如壊れたテレビのようにガザガザ消えかけようとしたら、そりゃあ世界中がパニックになるのは当たり前。
「今朝の職員会議で決まりましたが、今日はこのHR終了後、自宅待機をしてもうことになりました」
――えっ、マジかよ!せっかく来たのに。
「一応明日からは通常授業の予定ですが、もし変更があった場合は連絡網を回します」
二十分程のHRが終了すると、あっけなく解散となった。
こんな摩訶不思議な現象はもう起こさせない。
だから、学校休みにしなくても大丈夫なのにな……。
さっさと身支度整えて一刻も早く、と教室を出ていく生徒に比べ、俺はのんびり佐藤さんを迎えに足を向ける。
だが、彼女の前には既に背の高い男が立っていた。
「一緒に帰ってもいい?」
あいつのことを必要としている桜子ちゃんにではなく、佐藤さんに一緒に帰ろうと言った島津は、彼女のことを真上からじっと見下ろしていた。
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