七海の物語 ①

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リビングのソファーにあい向かいに座った。 テーブルで距離をとりたかったから。 『先生から……、倉地から連絡貰ったよ。進路、決めかねているのか?』 父は、どんな時でも決して感情的にはならず、話しはよく聞いてくれる。 だから、大概の事は話せるのだか、今回は違った。 あたしの中に、ずっと蟠っていたママの事が絡んでいたからだった。 『進路は……一度は決めたんだよ。でも…… でも、それを許せないあたしがいるんだ。自分でも、分からないけど……。』 途中まで口にしたが、思うように言葉にならない。 心の中には伝えたい思いが溢れていると言うのに……。 余計にイライラが募った。 『どんな方面に進もうとしてる?』 あたしは、ボソッと一言だけ、 『……看護師 。』 『!!そうかっ、そうだつたのか!素晴らしい選択だと思うがな。で、許せないってのは、何なんだ?』 あたしの悩んでいる事に、全く気が付かないのか、それとも、あたしの口から言わせたいのか? この能天気そうな顔をみていたらふっと、悲しませてやろうか?と、言う気になった。 全く、親を前にしてもこのドSな性格があたまをもたげた。 なんて……娘なんだろう。
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