七海の物語 ①

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『医療関係ってさ、パパもそうだし、お利口なお兄ちゃんもそうだけど、食いっぱぐれないじゃん?だから、選んだんだよ。一応、人の役にもたつ仕事だし……。でも、家族、犠牲にする事多いじゃん、そこんとこが許せないんだよね。 許せないって言うより、認められない?……ぶっちゃけ、ママの職業だったから嫌いなのかも、だよ。』 我が家の星てある兄は、医学生である。 何気に、あたしの理想でもある兄は、と、言っても決してブラザーコンプレックスではないから……、進路を決める時、一片の迷いもなく医師への道を選んだ。 実際、5歳離れており、相談など受ける筈も無いので、あくまで勝手な想像だが……。 最後の言葉を吐いた時、一瞬だったが父の顔が悲しみの色にかわった。 (ヤバいか? でも……仕方ないじゃん、まぢ、思ってんだもん。) あたしはばつが悪くなり、向きを変えてソファーの端に座り直した。 父は、そんなあたしをじっと見つめ、真っ直ぐに顔を見ながらゆっくり、一言一言、話し始めた。
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