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俺は店の外に出ると、真っ先に少女の元へと駆け寄る。身長から察するに、俺とそう変わらない年なのだろう。俺は声をかけようとして息を吸い込み――。
少女は身をひるがえして逃げだした。
「――あ、ちょっ、と!」
分かってはいたがいきなりの行動に、変な風に声が出てしまう。すぐに息を整えると、少女を追いかける。
「こ、来ないで! カードゲームはやりたくないの!」
逃げながら少女が叫ぶ。
「じゃあ、なんでやりたそうにこっちを見てたんだよ!」
「! ……あなたには関係ない!」
俺と彼女の追いかけっこは男女の体力差が物を言い、公園で追いつくことができた。両者とも乱れた息を落ち着かせる。
「……カードゲームは、できません」
走っていた時と同じようなことを少女は言った。
「なんでだよ。怖いのか? ……負けてしまうのが」
俺の言葉にキッと唇をかみしめると、重い声で呟く。
「怖いんだよ。――勝ってしまうのが」
「おいおい、それはどういう意味だ? なんで勝つのが怖いんだよ」
「言っても分からないよ。……そうだね、実際に味わってみれば分かる。私と勝負しましょ? サレンダー有りで。私と勝負して、サレンダーをしなければあなたの勝ち」
「サレンダー有り? ――するわけないだろ」
「それはどうかしらね……」
俺たちは公園から机を二つほど借り、自分のデッキを置く。
「なんだ、デッキ持ってんじゃねえか」
俺の言葉に、少女はうつむいて何も答えなかった。
デッキをシャッフルし五枚を手札に加える。そのとき少女が小さくつぶやいた。
「――さあ、あなたはいつまでもつのかな?」
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