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「あの、」
彼女は、ゆったりと垂れている黒髪を少し、かきあげる。
「ごめん、なさい」
「え……なに、が」
どこか焦ったような、間抜けな声。彼女の、静かな声とは対照的だ。
「あの。先輩が、ね、二十四日に一日だけ、帰ってこられることになったの」
「先輩って、もしかして……」
「うん。……椎名、先輩」
真っ白でぷくぷくした頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。
「本当は年末になるって言ってたんだけど、無理やり都合つけてくれたみたいでね」
「……う、ん」
「それで……あの、」
吐く息は真っ白で、空気の冷たさを物語る。
いつの間にか、手、だけにとどまらず、体全体がかちこちに固まって、動かなくなっていた。
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