第1話

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* スタートラインは、たぶん、僕の方が有利だったはずだ。 僕が彼女と出会ったのは、去年の、春。高校一年生になったばかりのことだ。 うちの高校は、中高一貫で新入生の半分は中学から上がってきた内部生ばかりだったから、“高校生活の初日”とはいえ緊張感は無いに等しかった。 半分は中学からの知った顔だったし、初めて見る顔の男たちとも、入学式前の少しの時間、不思議なくらい打ち解けていた。 入学式は、ぐだぐだだった。周りの教員たちも、中学から知っている人ばかりだったし、変わったことなんて、クラスメイトくらいしかないから、緊張感を保つことはひどく難しくて。そしてそれは、みんな一緒。内部生みなが感じていることらしかった。(あとでこっぴどく叱られたことは言うまでもない) そんな、緊張の糸の緩んだ(緩みすぎた)中で、その時だけは、ピシッ、と、貼り直されたようだった。 「古坂梨花子です。よろしくね」  隣の席から声がして、あぁ、僕に言っているのか、と振り向けば、彼女がいた。 ふわり、とした空気。人懐っこい、笑顔。決して特別美人というわけでも、特別可愛いというわけでもなかったけれど、どうしてか、今日初めての緊張を覚えた。 なんとか振り絞って出した返事は、よろしく、となんともそっけないものになってしまった。 彼女は僕以外のクラスの男とはあまり話さないようだった。そんな日々が、続いた。
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