第1話

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九月の末。文化祭も終わり、お祭りムードが過ぎ去った、ある日。彼女は突如として僕の、クラス以外の世界に飛び込んできた。 「今日からバレー部のマネージャーをさせていただきます、古坂梨花子です。よろしくお願いします」 彼女は、ひどく緊張した面持ちで、西谷先輩(うちの部唯一のマネージャーだった)の隣にいた。 練習の合間、僕と目が合うたびに小さく微笑んだ、ように見えた。 いつの間にか、僕の心は彼女に奪われ、恋に落ち、たぶんそれは彼女のあの親しげな態度を見る限り、彼女も僕と同じだろう、と、思うようになっていた。 そしてそれは、僕だけでなく、僕の学年のほかの部員も思っていたことらしかった。 「古坂さあ、あからさまに本木のこと好きだよな」 「え」 「だって、古坂、お前とよくしゃべるし。てか、オレらとかとあんましゃべらないっていうか」 「そうかな」 「そうだろ。な、思わん?」
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