第1話

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*  何かが違う、と、感じはじめたのはいつだったか。 僕たちは二年になり、僕たちのひとつ上の先輩が引退してしばらくしてからのこと。彼女の口から、“椎名先輩”の言葉が出てくるようになった。 もともと、OBさんと仲が良いようには見えたが、それは、よく僕たちを指導しにきてくれる先輩に限られていた。 椎名先輩は、僕たちの二つ上。今年うちを卒業した先輩で、県外の大学に進学していた。 彼女が入部したとき、彼は既に引退していて、面識と言えば、数回ほどしかなかったはずなのだ。 ……なのに、 「椎名先輩、今月末には帰省するって」 そしたら、指導しにきてくれるって言ってた。 そう言って、頬を赤く染めて、彼女は嬉しそうに微笑んだのは、それは、夏休みに入る、すこし前のこと。
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