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「え?や、 ごめん、空っぽだったの? わ。じゃ、捨てとけばよかったんだね。 、ごめん、まだ入ってると思って・・・」 「あ、いや、違う、 え、と。置き忘れてきただけだから。 うん、ごめん、ありがと。」 我に返り、慌てて空袋を取る。 香苗の事とか考えてボーっとしてたから ボディーペーパーの袋を拾い忘れてきてた。 決して、わざとそこに捨ててきたわけじゃない。 見上げると、涼やかな、って形容詞が浮かぶような顔と目が合った。 でもその子はちょっと困ったような微笑みを浮かべて、 「そう? なんか、ごめんね。余計なコトして。 ・・・じゃあ。」 「いや。余計、じゃない。ホント。ありがと。・・・んじゃ・・・」 後ろ姿を、見送る。 少し色素の薄い髪を二つに括って、 学校指定のカーデガンの上から小さめのリュックを背負って。 この暑いのにカーデガンなんか着てる。 で、袖を肘のあたりまで捲り上げて。 あの、腕、だ。 腕なんだ、けど。 俺の目の前にあった、白い、腕。 絹のような? いやもっと艶やかな。 ゆで玉子? いや、もっとスベスベで。 赤ん坊の肌、みたいにはプヨプヨしてない。 何だろう,あんなモノ 初めて見た。あんな綺麗な・・・ 「・・・うわぁ。」 キモっ!俺。 いつの間にかカバンは括りつけてたけど、 自転車に乗るのを忘れて、押して歩いてたとか。 ありえない。 ふるふると、頭を振って辺りを見まわし、 どうやら誰も自分を見咎めていなかったことにほっとして、自転車に乗った。
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