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「また来週な、茜、琉星。」
「ん。」
大勢の行き交う改札口。
帰りを早めたのは笠原里佳たちと一緒に帰るため。
「蒼汰、ほんと来週無理しなくて良いよ? 私夕方まで部活だし。」
「茜ぇ、冷たいなあ。琉星が居ったらもう俺は要らんのか?」
「そっ、そんな訳ないでしょ!?
もうっ、蒼汰だって里佳ちゃんとデートしたいんじゃないかって思って言ったのに!」
「え? あ、ん~・・・・」
蒼汰の視線は左斜め上。右側に立つ笠原里佳は頬を染めて俯き加減。
・・・漫画みたいな絵だな、こりゃ。
「ふふ、ほら蒼汰、もう電車くるよ?」
「ん。ほな琉星、茜ンことよろしくな?」
「おう。」
成沢の目を真っ直ぐ見ると、嬉しそうに目を細めてくれた。
「んじゃ保科クン、俺の未来の奥さんをヨロシクな? ったー!!」
俺がイラっとする間もなく
バシンッと頭を叩かれた長谷川。
「誰がオマエなんかに可愛い妹をやるか!」
「なんでや!! 俺の可愛い妹は持ってくくせに!」
「コイツはもともと俺のんや!」
「んな~~!!」
「ちょっ、二人とも! 恥ずかしいからっ!!」
顔を赤くした笠原里佳が割って入ると、成沢が彼女の手を引っぱって自分の側に寄せる。
「ええやんか! 俺だけ独りで寂しいんやから!」
「プハッ」
「琉星、笑ってんと・・・・まあ、ええわ。
ほな、行くな。」
「ああ、またな。」
「電話するね? 」
最後の最後にやっぱり寂しさを滲ませた声になった滝宮の頭を、成沢がぽふぽふと撫でて
「俺もかける。朝昼晩、な?」
いまだに俺の敵わない、蕩けるような笑顔で答えた。
改札を抜け、二度ほど振り返りながら成沢達はエスカレーターを上がって行って。
駅ビルを出ると、街は金色の光に彩られていて、ちょっと不思議な眺めにまるで夢を見ている気分になる。
嫌だぞ、夢だなんて。
滝宮とこうして居られるのに。
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