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「確か、滝宮茜、だったな。名前。」
2年になって、同じクラスになった。
喋ったことはなかったと思うけど。
浩輔が「めっちゃ好み!」って
騒いでた相手だ。
「・・・いやいや。
腕見ただけだし。」
なんでこんなに捉われてるかな、俺。
もう考えるな。
「そうだ。ボディーペーパー買わないと。」
ボディーペーパー、ボディーペーパー、と
声に出しつつ自転車を漕いでたんだけど、
五分後にはまたあの白い肌に意識を占領されて、
店の前を行き過ぎていたのだった。
***
「お帰り。」
「なんだ。居たんだ。」
「居て悪かったわね。」
・・・んなわけないじゃん。
やっぱ香苗の声がしないと、家の中がイマイチ地味というか、静かすぎるというか。
「夏服取りに来ただけだし。ご飯食べたら帰るから。」
「え?帰るの?」
俺の声に、香苗はちょっと意外そうな顔をしたが、
ニヤリと笑って、
「そうかそうか。
琉星クンはお姉ちゃんが居ないと寂しいか。
じゃ、泊まっていったげようかなー。」
とか言う。
調子にのった香苗には何を言っても適わないから、
ちょっと不機嫌な顔を作って、フン、と軽く睨んで背を向けた。
どうせ今夜は一人だしー、と呟き二階へ上がっていく香苗。
・・・、一人じゃなきゃ、誰と居るんだ?
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