第2話

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 彼女の手には、“なにか”が形になってきていた。  もう少しで完成じゃないか。  彼女の表情には少し笑みが混じり始めた。  (たまにはこうやって眺めているのも悪くない)  チクチクと針は進んでいく。  綿の入ったフェルトはぬいぐるみのようだ。 「…………できた!」  彼女が喜びの声をあげた。その表情は満面の、笑顔。 「かなちゃん、かなちゃん。これ、何だと思う?」  無邪気に俺に見せつけてくる。  真っ白な丸い物体。  ……ちゃんと目も鼻も口もあるらしい。胴体部分と顔の部分とも別れてる。  猫のような耳……けどでかいか?  犬な訳はなさそうだ。くまでもない。  (これ、間違えたら……泣くな。絶対)  必死に頭を悩ませていると、彼女が目を輝かせているのが目に入った。  あーもう!  「………うさぎ?」  一か八か……間違ってたら終りだ!  しばしの沈黙。   あいつからは正解とも不正解とも読み取れない。 「あったりー!これね、かなちゃんにお誕生日のプレゼントだよ」  ニコニコして両手で差し出してくる、彩帆。  え……
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