第6話

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「気づいてないと……思ってたの?」  え……と目を丸く開いた。  気づいてた。もう何ヶ月も、エンジェルハートの香水の香りがする。 「じゃあ、失礼します」  彼の前から去ることが、こんなにも苦しい。  でも、それ以上に彼のそばにいることが、辛い――  わたしは涙が溢れるのをグッとこらえて、席をたった。  そして何も言わないまま、彼の横で立ち止まった。  彼はわたしを引き留める様子もなく、座っていた。  じっとわたしの飲みかけの紅茶を見つめてた。  ウエイトレス横を通り過ぎたとき、持ってきたコーヒーの香りが、わたしの涙腺を余計に刺激する。  千葉先輩、コーヒーばかり飲んでたから。 「のぞみ……ごめんな」  彼は小さく呟いた。  もう、サヨナラだ 「先輩のこと、大好きだったよ」  (ずっと、ずっと信じてたんだよ) 2010.11.12
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