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「ホラ!夏目くん、今日もきっと来るんでしょ!?」
ホラホラ、と言いながら美佳はわたしの背中を叩いた。
丁度そのとき、向かいの校舎から、彼が出てきた。
何やら隣にいる黒髪に黒縁眼鏡の男の人と楽しそうにおしゃべり中だ。
(やっぱり……かっこいい)
茶髪の少し長くなった髪が風に揺れた。
…………声なんて、かけられるはずないじゃない。
(話しかけてくれたら……いいのに)
そんな無茶苦茶なことを考えていたら、ヒュー、と強めの風が渡り廊下を襲った。
めくれ上がりそうになるスカートを押さえた拍子に、持っていた化学Ⅱのプリントが宙を舞う。
(あれ、この間のテストで赤点だった人用なのに……!)
あぁっ、と手を伸ばしたときにはもう既に遅かった。
わたしのプリントは――――……
しっかりと、彼の手に握られていた。
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