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「その顔は信じてない顔だな。まっしゃあない か。俺、式には間に合わなかったしな」
「………」
余計混乱させてしまったのか、夢海は無言に なってしまって、その顔は怪しんでいるように も見えて、
「T市からきたんだ。父さんの仕事の都合でさっ きついて、手続きしてから教室きたんだけど、 もうみんな帰っちまったんだな」
改めてちゃんと説明し直してみた。
「そ、だったんだ。えっと、じゃあよろしくね」
やっと理解してくれた夢海は俺に向かって微笑 んでみせる。
欲しかった笑顔が今目の前にある。自分にも笑 いかけて欲しいと願ってた思いが、本当に叶っ た俺は柄にもなく照れてしまう。
思った以上に緊張が走る。
心臓が皮膚を突き抜ける勢いで暴れだし、バク バクと激しく音を立てて、鼻から大きく息を吸 い込んだ俺は心の準備を整えた。
―――今だ。
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