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「俺と付き合わない?」
…--ドサッ。
驚いた夢海の手から離れた鞄が廊下に落ちた。
―――やっぱ初対面でいきなりは無理があった かな?焦りすぎたか……。
本当は付き合って欲しいとちゃんと言うつもり だったのに、変に緊張してしまったせいで軽い ノリになってしまった。
タイミングもやっぱり早まったかと、一瞬でい ろんな事を考えた俺の耳に届いた声。
「…うん」
頬を赤く染めて、小さく返事をする顔を見て、 俺の喜びは頂点に達する。
「はぁぁ………」
一気に緊張が解き放たれて、心底ホッとした俺 は安堵の溜め息を漏らした。 心の中でガッツ ポーズをしながら。
「本当に付き合ってくれんの?じゃあさ、一緒に 帰ろうぜ。送ってく」
まだ一緒に居たくて俺は、咄嗟に言ってしまっ たけど。
―――確か下で友達が待ってたな。今日は諦め るしかねぇかな?いや無理だ。やっぱまだ話し てぇ。
そんな事を1人で考えていると。
「あぁ~っ、忘れてた」
「…はっ?」
「友達、玄関に待たせてる。ごめんね」
やっぱり夢海は友達を選んだ。それが何だか悔 しくて。
「じゃあ俺も一緒に謝ってやるから、先に帰って もらおうぜ?行くぞ夢海」
返事も聞かずに強引に、夢海の腕を掴んで階段 を降りた。
「えっ…。ちょっと、誰?」
3人が待つ玄関にたどり着くと一緒に現れたら 俺を見て、背丈が夢海くらいの女はかなり驚い た様子で、しかも怪しんだ目で睨んでくる。
あの日、初めて夢海を見かけた時に隣にいた女 だ。
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