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ある中学の校門で、俺は4月から通う校舎を じっと見つめている。
南城亮二(なんじょうりょうじ)この春からこ の町に住み、ここ緑ヶ 丘中学の生徒になる新1 年生だ。
―――T市に比べたら随分とでかい町だけど、 俺はこの町でこれからどうすりゃいんだ?何も する気になれねぇや。どいつも、こいつも、悩 みなんかなさそうな顔しやがって……。
「はぁ…」
険しい顔つきで1人溜め息をつく俺は、その場 を立ち去ろうとした。
「いよいよ私達も中学生だね」
「早く制服着たいね~真澄」
その時、入学受付を済ませて下校する、ガヤガ ヤ賑わう生徒に紛れて偶然聞こえた声に、踵を 返した俺の足は自然に止まっていた。
―――たかが中学入るぐらいで、どこがそんな に楽しみなんだ?
なんとなく、そうなんとなく振り向いただけ だった。
玄関から出てきたワクワクと弾む声の主は、隣 りにいる少女に向かって、とびっきりの笑顔を 見せている。
……ドクン………。
胸の中で、何かが大きく音を立てた。
低めに結んだツインテール。小さい体にショー トパンツを履いて、覗く足にはカラータイツ。
その姿に釘つげになる俺は、その子の笑顔から 目を離す事ができなかった。
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