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その時、1人の男が駆け寄ってきて、その子の 肩に手をかける。
「夢海ちゃん、一緒に帰ろうぜ」
―――あの子、夢海って言うんだ。
……ドクン…――。
さっきからなんなんだ、この胸の痛みは。
―――あいつ、あの子のなんなんだ?。つうか ムカつく、苛々する。
俺はその時、その笑顔を独り占めしたいと思っ た。
その笑顔がいつも傍にいてくれたら、また昔み たいに、きっと笑える。
その子の笑顔は、一瞬で俺の心を捉えていた。
これが一目惚れってやつなのか?
―――この町も、意外と捨てたもんじゃねぇか もな。入学式が楽しみだ。
ずっと一緒に過ごした仲間と同じ中学に行けな いなら、もうどうだっていい。新しい友達なん て必要ないと、なげやりな気持ちで今日ここに 来たのに。
たった1つの笑顔が俺を変えた。
僅かな希望を見出だした俺の足取りは軽く、生 まれ育ったT市に戻って行く。
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