7人が本棚に入れています
本棚に追加
住み慣れたこの町を離れるまで後数日。
急な引っ越しが決まったのは3ヶ月前で、その 原因となる事件が起きたのが4ヶ月前。去年の 12月、冬休みの事。
友達と雪合戦をして遊んで帰ると、リビングか ら何やら揉めている声がする。
そっと聞き耳をたてた俺の鼓膜に、子供には酷 すぎる現実が飛び込んでくる。
『貴方に隠し子がいたなんて……。しかも亮二 と同じ歳なんて酷すぎる』
それは泣き叫ぶ母さんの声。
『すまなかった。本当に申し訳ないない 彼女が妊娠していたなんて、ましてや勝手に出 産していたなんて、初めは全然知らなかったん だ』
見苦しい言い訳をする父さんの声も聞こえる。
父さんの浮気、母さんを裏切っていた。いくら 子供の俺でも、その内容は十分理解できる年齢 だ。
―――まさか……、離婚?
最悪の結末が脳裏を過った時。
『結婚前の事は若気の過ちで目を瞑ります。で も、その女や子供が同じ町にいるなんて耐えら れない。もうこの町にはいたくないわ』
母さんは父さんを許した。そして年明け、突然 決まった引っ越し。
全て大人の身勝手な事情だった。
そんな時、俺に追い討ちをかけたのが八木乃里 子(やぎのりこ)の出現。腹違いの妹。
最初のコメントを投稿しよう!