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とうとう迎えた引っ越しの日。
荷物は午後に届くよう手配して、空気が冷たい 早朝6時半、俺達家族は車に乗り込みこの町を 出た。
成長を考えて購入した少し大きめの学ランを着 る俺は、ピンクのワンピースを着た涼香と並ん で、後部座席で朝食を取る。
着くまでに4時間もかかる遠い町、そこに夢海 がいると考えたら落ち着かなくて。
「お兄ちゃん。食べてる時に貧乏揺すりはやめ てよね。行儀悪いなぁ」
涼香に注意された俺は、軽く舌打ちしてそっぽ を向いた。流れる外の景色は田畑と山ばかり。
T市とその周辺の地域は農家が多く、後1、2 時間は綺麗な景色なんか望めないから、瞼を閉 じた俺は着くまで眠る事にした。
………バタンッ。
ドアが閉まる音で目が覚めた。
―――どこだ?ここは………。
見知らぬ場所で停車する車。隣にいた涼香と助 手席の母さんの姿がない。
ふと視界に入った文字は“**小学校”の5文 字で、どうやら涼香の転入先に到着したんだと 気づいた。
「もうすぐ中学つくから、降りる支度しとけ よ」
「………」
運転席からミラー越しに声をかける父さんに、 俺は目も合わせず返事もしなかった。
走らせた車は10分ほどで中学に着き、正面玄 関の前に立つと入学式の看板を眺める。
時刻は11時過ぎ。ちょうど式が終り、それぞ れの教室に移動した頃だろうか。
母さんは涼香に付き添った為、嫌でも俺の付き 添いは父さんて事になる。
仕方なく父さんについてまずは職員室に向か う。
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