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-Overture-
俺とムラキの場合。
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「また、勇者が召還されたんだってねぇ…?」
…そう言って。紅い上質な椅子に座ったムラキはニヤリと笑った。
「…情報が早いな。けど、どうせ今回も偽物…」
前回の自称勇者はひどかった。
…傾国の悪姫とは、彼女の事だと思う。
話が通じず、怒りっぽい上にワガママ。
…王子に国王や騎士にコック。みんな骨抜きになり、国政が傾いた。
「今回は、ホンモノだねぇ?」
「…はぁ?なんで、分かる」
「んー?僕、会ってきたもん」
…その言葉に俺はお茶を入れていたカップをうっかり落としてしまった。
割れた破片が床に飛び散る。
「あー、あ。…レンレン、危なぁい」
「゛危なぁい゛じゃねー。お前を封印できるのは、お前の運命の相手だけなんだぞ?なんで笑ってられる?」
そう言って肩を掴むとムラキは、キョトンとした後に静かに笑った。
「レン?…だって、僕は1000年も待ったんだよ。彼女に会う為に」
「1000年前に眠らされてからだろ?…お前、まさか。おとなしく眠るつもりじゃねーだろうな?」
ふふふ、と楽しそうに笑って。
…ムラキが人差し指で弧を描く。
すると、床に落ちたカップが逆再生するように元どおりになり…
ムラキの手の中にすっぽり収まった。
「僕と彼女は、そうゆう運命で結ばれてるんだよ?」
「運命?…そんなの、認めねー」
……そんな運命は絶対に俺が壊してやる。
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