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「あれぇ?君、こんな所でどうしたのー?」
…間延びした声で覗き込んだ二つの瞳。
遊び人風の格好で、飴色の髪は風にサラサラとなびいていた。
「言っておくが、迷子じゃねーから」
“だから、かまうな”そう言って下を向く。
…空気を読んでくれ。早くどっかに行って欲しい。
ポンポンと撫でる腕をなぎ払う。
「…家なし子に構ってるほどアンタも暇じゃないんだろうし」
……ぽつりと俺がこぼした言葉を拾って、そいつは笑んだんだ。
その笑顔があまりにもあたたかくて、……俺の頭の中は一瞬にして真っ白になる。
「ねぇ、君。名前は?」
「レンだよ、レン」
…連と書いて、意味はつらなる。
゛兄達に続いて使命を果たし、見事に散ってこい゛と長が俺につけた名前だ。
「レンかぁ、いい名前だね」
そう言ったソイツに首を傾げる。
…どこがだよ?
「…廉。いさぎよい、心にけがれがないって意味でしょ?」
…その言葉に俺は目を見開いた。
「…じゃあ、レン。お家がないなら、僕と一緒に来るかい?」
…そう言って、差し出された手を躊躇いがちに握る。
「…あんたの名前は?」
「ムラキ」
…手を引かれて歩き出す。
ムラキは何も持たない俺が、唯一手に入れた。…初めての温もりだった。
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