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「っ、役割ってなんだよ?約束って…」
…俺を慰めるように、ムラキ大きな手が俺の背中を撫でた。
この大きな手も、温かなぬくもりも。
諦めるなんて嫌だ……。
「うん。そうだね…。レンには、話しておかなきゃだね?」
…そう言って、ムラキは指をパチンと鳴らした。
…すると、椅子が二つリビングから此方に滑るように向かって来て、目の前でピタリと止まった。
「…座って?」
…その言葉に頷いて、おとなしく椅子に座る。
「どこから、話そうかなー?んー」
考えるように言って、ムラキは向かいの椅子に座った。
「えーと、ね。僕、魔王になる前は神官をやってたんだけどね?」
「は…?」
俺が驚いても仕方ないと思う。
…魔王と神官、…ま逆じゃないか。
「…で、彼女も神官だった。…この時点で彼女と僕は仕事仲間かな?」
「お前の説明は話が飛びすぎる。…とりあえず、彼女って…?誰だよ」
「勇者」
仕事仲間が、天敵に?
…コイツは、どんな人生を。
「…僕はずっと彼女が好きだったし、彼女も僕が好きだったと思う」
「え…?」
そう言って、切なそうに目を細めたムラキに。…一瞬、息をする事を忘れた…。
ムラキと勇者が、恋愛関係?
…驚きとともに。抜けないトゲが刺さったみたいに、チクリと胸が痛む。
「…けどね?僕等は神官だから。恋愛系は御法度。…一緒に切磋琢磨して、神様につかえるのが僕等の日々の幸せだった。
…それが、ある日壊れた」
…その後のムラキの話しは、俺の想像の上をいっていた。
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