第1話

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朝6時過ぎであったが、まだ夜更け近い天気であった。 掛け布団に予めかけておいた、血で赤くなったタオルを取り布団の下に潜らせる。 「う、お兄ちゃん、おはよう、あいにくの天気だね」 ねまき姿の真弓は写真に話しかけていた。 ピューピューと息を立てながら。 白黒の写真であったが、一人の青年と真弓自身が写っている。 ミシミシと一階から誰かが上がってくる音が聞こえる、母のお菊だろう。 気づかれないよう、何もなかったかのように横になり目をつぶる。 音を立てて入ってきたのは予想通り母だった。 「真弓。体の調子はどうだい?」 ねまき姿の母、お菊が部屋の窓ガラスをガタガタと音を立てながら開けた。 「ん、おはよう。今日は調子いかも」 「それはよかった。ご飯持ってくるね」 そう言うと一階へ戻っていった。 真弓はねまきの開けているのを直し上着を羽織った。 布団から体を起こして、本棚から暇つぶしの為の本を取りに行く。 「今日はこの本を読もう」 片手に持ちながら壁にかかっているカレンダーを見る 「今日は花火大会か、このままだと中止かな―ゴホッゲホッどちらにせよ関係ないけど」 窓際まで近寄り、曇天を眺めた。 「こら真弓、ちゃんと寝てないとダメでしょ」 一階から朝食を持ってきたお菊はお盆を持っていた。上には味噌汁と漬物と白飯と簡素だった。 「今日調子良いって言ったじゃん」 そう言って布団に戻る。台を置き、朝食も上に置く。 食べ終わったら言ってねといいまた下に戻る。 外は予想していた通りポツポツと雨が降ってきた。 「いただきます」
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