第1話

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真弓は結核であった。当時のその病気はもはや治せる病ではなかった。 その上、この丹波家にそれを看病するための財産はもうほとんどなかった。 戦争の人員収集以前、丹波家は旅館を営んでおり其処ら辺では少し有名であった。 しかし、父も、跡取りとして育たれた兄・大空も戦争に出向いている。 ので丹波家は現在その家には母のお菊、長女の真弓、次女の菜々のみであった。 十分な栄養も、十分な看病も満足にできるハズはなかった。 そんな状況下ではそうならざるを得なかった。  真弓は空になった茶碗をお盆の上に乗せ一息を付いた。 「ごちそうさま、菜々。わざわざ悪いわね」 着物を着込んでいてどこかに出かける様子だ。 「お姉ちゃん、大丈夫?辛くなったら言っていいんだからね」 お盆に片付け隣に座っている。 「わかったよ。お姉ちゃんのことは気にしないでいいから」 「・・・・・・うん」 そう言うと、ふとカレンダーを見上げた。 「もう七夕だね」 生暖かい湿った風が部屋の中に入ってきた。 「お兄ちゃんとお父さん、どうしているかな」 「え……さあどうしているかね」 何事もないように言い放った。 一階から、行くよー。という母、お菊が呼んでいる。 菜々はあっじゃあねと言って片付けて下に行った。 真弓は心に空いた、ポッカリと空いてしまった穴をしばらく埋められなかった。
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