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神父って何者なのか。
シャナンを諦めろというが、カナーンは諦められるのだろうか。
孤独に時を彷徨って生き続けるなど、加奈にはできそうもなかった。
これからどうしたらいいのか。
カナーンの言うように、身を隠すしかないのか。
山崎はるやもまた、無意識に三神加奈へ近づいて監視していたのだ。
はるやと加奈は過去の運命に引き寄せられた出会いだったのだ。
今まではるやを気遣っていたことが間抜けに思えた。
もうはるやを信じられない。
はるやの存在が怖くなった加奈は、これ以上傍にいられなくなった。
運命が、強い力に支配されている気さえする。
これは神の力なのか。
神がもし本当に存在するのであれば、吸血鬼は忌むべき存在なのか。
でも吸血鬼は存在し続けているのだ。
存在意味はなんだろうか。
人間としての人生が偽りのものだったとするなら、何のために生きてきたのだろうか。
加奈は半分眠った状態であれこれ考えて、ずんずん深い水底に沈んでいくようだった。
体が重たくだるい。
もう何も考えたくなかった。
「加奈……」
加奈が深い眠りにつこうとした時、自分の名を呼ぶ声がして深く暗い水底から急激にすくい上げられたように、目が覚めた。
ソファに倒れこむように眠りについていた加奈は、ゆっくりと開眼し、目の前にいるシャナンを見た。
青く深い、寂しそうな色をたたえているシャナンの瞳。
その瞳を見たとき、加奈ははっと気づいたのだった。
ああ、そうだった。
シャナンのために生きているのだ。
全てはシャナンのために。
シャナンを守りたい。
シャナンを愛している。
ならば、山崎はるやが障害なのであれば、逃げるのではなく立ち向かっていけばいい。
神父の生まれ変わりといっても所詮人間なのだから、そこまで恐れる存在ではないのではないか。
三神加奈として存在し続けられるのかもわからないが、きっと今の自分はシャナンのためにあるのだ。
愛しいシャナン。
「シャナン!」
加奈は跳ね起きて、シャナンを力いっぱい抱き締めた。
「加奈?」
「私、どんなことをしてでも神父からシャナンを守る」
戸惑うシャナンに、加奈は力強く断言した。
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