8人が本棚に入れています
本棚に追加
――狂おしいほど愛している。お前を灰になどさせるものか。
カナーンの強い意志が、加奈にも伝わってきた。
だが、同時に破滅の予感を匂わせる、暗雲とした感情も伝わってきた。
――私には何ができる? シャナンが必要としているのは、頼れる強いカナーン。
私には何の力もない。
ただ、三神加奈の存在が消えるのではと、脅えているしかない無能な自分。
加奈はカナーンの情熱を知れば知るほど、自分が必要とされていないように感じた。
「馬鹿な。加奈もまた、カナーンだと言ったはずだ」
カナーンは、キスをやめてシャナンから手を離し、呟くように言った。
「どうしたの?」
「いや、こちらのことだ」
カナーンはそう言って微笑み、愛しそうにシャナンの髪を撫ぜた。
突然、窓の一つが、大きな音と共に観音開きになり、厚手のカーテンが風になびいて、強い風と共に殴りつけるように降っていた雪が入り込んできた。
「風が、私達のことを嫉妬しているのかしら」
くすりと笑いながら、シャナンは窓を閉めた。
「じゃあ、もっと嫉妬させてやろう」
カナーンは目を細めて、悪戯っぽく笑いながら窓際にいるシャナンに近寄り、いきなりシャナンが着ているシルクのネグリジェを、荒っぽく引き裂いた。
引き裂かれたネグリジェは、辛うじてシャナンの腰の辺りに引っかかっている。
「カナーン、酷いわ。こんな……」
シャナンは恥ずかしそうに、胸を両手で隠そうとしたが、カナーンはその両手をいとも簡単に片手で掴んで持ち上げ、露わになったシャナンの上半身を舐めるように眺めた。
ギリシャ彫刻の女神像を思わせる白い肢体。
カナーンを通して、加奈もまた、シャナンの肢体にうっとりと見惚れていた。
「カナーン、お願い、手を離して。初めてなのに……」
恥ずかしさで頬を染めて目を伏せ、シャナンは懇願した。
遠い昔、二人は結ばれることはなかった。
こうして夜をすごすのは、初めてのことだった。
「だめだ。お前は私のものなのだろう? 私の前では、一糸纏わぬ姿でいるのだ。その麗しい肢体を隠すことは許さぬ」
最初のコメントを投稿しよう!