安息

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 ――狂おしいほど愛している。お前を灰になどさせるものか。  カナーンの強い意志が、加奈にも伝わってきた。  だが、同時に破滅の予感を匂わせる、暗雲とした感情も伝わってきた。  ――私には何ができる? シャナンが必要としているのは、頼れる強いカナーン。  私には何の力もない。  ただ、三神加奈の存在が消えるのではと、脅えているしかない無能な自分。   加奈はカナーンの情熱を知れば知るほど、自分が必要とされていないように感じた。 「馬鹿な。加奈もまた、カナーンだと言ったはずだ」  カナーンは、キスをやめてシャナンから手を離し、呟くように言った。 「どうしたの?」 「いや、こちらのことだ」  カナーンはそう言って微笑み、愛しそうにシャナンの髪を撫ぜた。  突然、窓の一つが、大きな音と共に観音開きになり、厚手のカーテンが風になびいて、強い風と共に殴りつけるように降っていた雪が入り込んできた。 「風が、私達のことを嫉妬しているのかしら」  くすりと笑いながら、シャナンは窓を閉めた。 「じゃあ、もっと嫉妬させてやろう」  カナーンは目を細めて、悪戯っぽく笑いながら窓際にいるシャナンに近寄り、いきなりシャナンが着ているシルクのネグリジェを、荒っぽく引き裂いた。  引き裂かれたネグリジェは、辛うじてシャナンの腰の辺りに引っかかっている。 「カナーン、酷いわ。こんな……」  シャナンは恥ずかしそうに、胸を両手で隠そうとしたが、カナーンはその両手をいとも簡単に片手で掴んで持ち上げ、露わになったシャナンの上半身を舐めるように眺めた。  ギリシャ彫刻の女神像を思わせる白い肢体。  カナーンを通して、加奈もまた、シャナンの肢体にうっとりと見惚れていた。 「カナーン、お願い、手を離して。初めてなのに……」  恥ずかしさで頬を染めて目を伏せ、シャナンは懇願した。  遠い昔、二人は結ばれることはなかった。  こうして夜をすごすのは、初めてのことだった。 「だめだ。お前は私のものなのだろう? 私の前では、一糸纏わぬ姿でいるのだ。その麗しい肢体を隠すことは許さぬ」
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