対面

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対面

 二人の少女が教室に入った途端、クラス中の女生徒がざわつき、あちこちからため息が漏れきこえた。  師走、さらさらと雪が降る、薄暗い空のある日。  とある全寮制の女子高校に、二人の転校生が転入した。  二人とも透けるような白い肌。  一人はウエーブのかかった黒髪に、青い瞳。  西洋のアンティークドールがそのまま立っているような少女。  もう一人は、やや背が高く、茶色かかったストレートのロングヘアに琥珀色の瞳。  顔つきはやや彫りが深く、日本人離れした印象を与えた。  そして、二人の優雅な仕草が人目を惹いた。 「お静かに! 森羅シャナンさんと、三神加奈さんです。皆さん、仲良くしてあげてくださいね」 「宜しく」  二人は上品な微笑をたたえ、軽くお辞儀をした。  うっとりした顔つきで二人を見つめる女学生の間を通り過ぎ、教室の一番後ろの席へ、二人は隣り合わせに着席した。  そんな視線にも加奈は戸惑うことなく、当然のこととして受け止め、微笑み返すことさえ忘れない。  今までの自分とは違う。  三神加奈ははっきりとそう自覚していた。  シャナンと過ごし始めてから、約八ヶ月が過ぎ、カナーンの傍若無人な行動や大胆な振る舞いが、三神加奈であるときも、自然とにじみ出るようになってしまった。  カナーンに染まっているのか、それとも三神加奈がカナーンを吸収しているのか。  もともと一人なのだから、同じことなのだが。  最も変わったのは、吸血行為が当たり前となったことだった。  夏の間、夕刻であっても日差しは体力を消耗するため、夜の歓楽街へ、二人は獲物を求めて彷徨い歩いた。  だが、行為の度に、三神加奈の脳裏に後悔が微かによぎった。  シャナンのため、今は生きなければならない。  そう自分に言い聞かせ、後悔を打ち消す。  今は生きなければならないと、三神加奈に直接語りかけてきたカナーン。  それはいつか自分がシャナンの前から消え去らなければならない時が来る、そういう意味の言葉なのだと三神加奈は受け止めていた。  シャナンのために生き、シャナンのために再び永い眠りにつく。  全てはシャナンのため……。  授業中、頬杖をつき、加奈はそんなことばかり考えていた。 「目立ちすぎだわ」
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