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顔を見られまいとしたのか、カナーンは立ち上がり、シャナンに背を向けた。
「カナーン……」
シャナンは背後から、カナーンに抱きついた。
強靭な力を持つようには思えない、細い肩。シャナンよりやや高い背丈のカナーン。
シャナンはその華奢な腰に手を回し、いとおしそうに背中に頬をつけた。
「私に触るな」
「もう、離れたくない」
払いのけようとして振り向いたカナーンの頬に手を添えて、シャナンは口付けした。
長い間、待ち焦がれていたカナーンとの抱擁。
一瞬、カナーンは切なそうに眉を寄せ、シャナンを抱き締めようと両手を挙げたが、直ぐにその手でシャナンを払いのけた。
「馬鹿な真似はするな。戯言は終わりだ。さて、私はこの娘を頂く」
カナーンはそう言い捨て、ソファに横たわったままの娘を片手で抱き起こし、シャナンに見せ付けるように娘の首筋を撫ぜ、牙を剥いた。
「娘よ、我が下僕になるがよい」
「あぁ、カナーンさま……」
シャナンの目の前で、恍惚が絶頂へと上りつめた娘の声が響いた。
シャナンは目を伏せ、顔を逸らした。
頬に涙が伝って落ちた。
カナーンが次に顔を上げた時には、シャナンの姿は消えていた。
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