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明け方近く、セラは一度目を覚ました。既に慣れたもう一人の気配。その心地よい温もりにうっとりしながらも、セラはそっと起き上がった。音を立てずにベッドから降りようとしたところで、シャツワンピースの袖を引かれる。
「どうした?」
「ごめんなさい。起こした?喉が渇いて、お水を。あなたも飲む?」
「頼む」
セラはリビングへ行って、グラスと水差しを載せた盆を持ってきた。そこにはヘリオスお気に入りの、ブラックオニキスという酒もさりげなく載せられている。ヘリオスは体を起こすと、ニヤリと笑った。ぞくりとするほど妖艶な男の笑顔だ。
「気が利くな」
セラは微笑んだ。こちらは大輪の薔薇が綻んだような艶やかさである。ヘリオスにグラスを差し出しながら、自分も水を飲む。ヘリオスはその様子を見ながら、自分も酒と水を飲んだ。セラがベッドに乗り上がったところで、そっと手を出して自分の隣に引き込む。そして無言で深く唇を重ねた。
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